近年、災害が増加し、いつ何時自分たちの身に起こるか分からない時代となりました。特に、愛犬を飼っている場合には、自分だけでなくペットの安全を守る責任もあります。前回の記事では【防災】の準備についてお伝えしましたが、今回は実際の【避難】時に愛犬をどのように守るか、その行動について具体的に紹介します。災害時には慌ただしく混乱しやすいため、あらかじめ避難行動を知っておくことで、安全性が高まります。
避難するタイミングの見極め
災害時、私たちは「正常性バイアス」により、危険な状況を軽視しがちです。正常性バイアスとは、緊急時に心理的ストレスを抑えようとし、事態を軽視する傾向のことです。たとえば、「みんなが避難していないから、ここも安全だろう」と判断してしまうのです。これにより避難が遅れ、大きな危険にさらされることもあります。避難のレベルに合わせた行動が重要です。下記のレベルに従い、災害発生時には迅速な判断を心がけましょう。
- レベル1: 災害への意識を高め、心構えを整える段階。普段からの備えが鍵となります。
- レベル2: ハザードマップなどを確認し、自らの避難行動を把握する段階。
- レベル3: 避難に時間を要する方(高齢者、障害を持つ方、妊婦、乳幼児など)から避難を開始。自分だけでなく、周囲の方にも声をかけて避難を促すことが理想です。
- レベル4: 速やかに危険な場所から避難所や避難先へ移動する段階。できるだけ迅速に行動し、万が一の事態に備えます。
- レベル5: 既に安全な避難が難しい状況のため、命を守るための最善行動を取る段階。可能な限り身を守る行動を優先します。
災害時にこれらの行動レベルを認識しておくことで、冷静な判断がしやすくなり、逃げ遅れのリスクを減らすことができます。
愛犬と一緒に避難するための準備(同行避難)
災害発生時、可能であれば愛犬と一緒に避難する「同行避難」が推奨されています。同行避難は、ペットを家族の一員として安全に避難所まで連れて行く行動を指しますが、避難所の受け入れ態勢も場所によって異なります。そのため、まず避難所の情報を把握し、愛犬と共に安全に避難するための準備を整えておきましょう。
- 避難用バッグの準備: 愛犬の食料、水、簡易トイレ、ペットシーツ、リード、予備の首輪、マイクロチップ情報が記載されたメモ、ワクチン接種証明書などを用意しておきましょう。特にリードや首輪は避難先でも必要になることが多いため、壊れにくいものを選ぶことが大切です。
- ハザードマップの確認: 自宅や普段の生活圏で災害が発生した際に避難する場所を事前に調べ、愛犬と共に安全に移動できる経路を確認しておくことが重要です。たとえば、水害が予想される場合は、高台への避難ルートを把握しておくなど、災害ごとに対策が異なります。
- 避難訓練: 災害時には想像以上に周囲が混乱し、犬も不安を抱えやすくなります。日頃から避難訓練を行い、愛犬が慌てず避難行動に従うようにすることで、いざという時の移動がスムーズになります。
在宅避難の利点と注意点
災害時に自宅が安全であると判断できる場合、無理に避難所へ行かずに「在宅避難」を選ぶこともあります。在宅避難は、愛犬と共に安心して過ごせる利点が多いですが、ライフラインの停止を想定し、事前の備えが欠かせません。
- 備蓄品の準備: 食料や水、愛犬のトイレ用品、必要な薬などを常備しておきましょう。特に水は、人間も犬も最低3日分は確保することが理想です。ペット用の携帯水などもあると便利です。
- 安全確認: 在宅避難の場合、窓ガラスが割れないよう補強フィルムを貼ったり、犬が安全に過ごせるエリアを設けるなど、室内の安全を確保しましょう。また、災害の種類によっては、食料や水の保管場所を見直すことも必要です。
愛犬を自宅に置いて避難する際の対策
避難先にペットの受け入れ態勢が整っていない場合、やむを得ず愛犬を自宅に残すことも考慮しなければなりません。この際、愛犬が少しでも安全に過ごせるよう工夫を施すことが大切です。
- クレートの活用: 愛犬をクレートやゲージに入れて安全な場所に収容することで、災害時の飛散物から守ることができます。また、避難が長期化する場合には食料や水を置き、最低限の環境を整えるようにしましょう。
- 危険な家具の移動: 家具が倒れないよう固定したり、愛犬の周りに安全エリアを確保することで、二次災害を防ぎます。
避難所での生活:他人への配慮と自分の責任
避難所では、多くの人と共に過ごすことになります。全ての人が犬好きではないため、愛犬と共に避難する場合には、他の避難者に対する配慮が求められます。下記のポイントを押さえておきましょう。
- 無駄吠えの防止: 避難所での無駄吠えは、周囲のストレスの原因になります。日頃から「待て」「静かに」などの基本的なしつけを行い、愛犬が周囲を不安にさせないようにしましょう。
- 衛生管理: 排泄物や抜け毛の処理をこまめに行い、他の避難者に迷惑をかけないよう配慮することが大切です。ペット用の使い捨てトイレや掃除用の袋を持参すると便利です。
災害時の飼い主同士の助け合い
災害時には、他の飼い主との助け合いが精神的にも大きな支えになります。ペットを飼う者同士が協力し合うことで、避難生活をより快適にすることができます。
- 自治体のサポート: 多くの自治体では【動物救護本部】を設置し、ペット用の物資支援や怪我の手当、迷子のペット対応などを行っています。事前に自治体の対応を確認し、避難所でのルールや支援制度を把握しておくと良いでしょう。
- 避難所での役割分担: 飼い主同士でトイレやゴミの管理などの役割を分担し、運営サイドと協力してルールを決めることで、避難所内でのトラブルを未然に防ぐことができます。
積極的に声をかけ、仲間を集める
避難所では、ペットを飼う人同士が協力し、支え合うことが重要です。自分だけでなく、他の飼い主にも声をかけ、困っている人がいれば手を差し伸べることで、避難所での暮らしが少しでも楽になります。また、ペット事業関係者や専門知識を持つ人と連携することで、避難生活がさらにスムーズになります。
災害対策を日常生活に取り入れる
災害対策は特別なものではなく、日常生活の中で自然と行うことが大切です。たとえば、普段から家族で避難について話し合ったり、愛犬と一緒に避難経路を確認したりすることも有効です。また、防災用品を常に準備し、災害に対する意識を高めることで、いざという時の行動がスムーズになります。家族と愛犬の安全を守るために、日頃の意識改革と準備を忘れずに行いましょう。